はじめに

近年はさまざまなサービスが増え、それに伴って多くの場面でアカウントを作成するようになりました。

私自身もアカウントがどんどん増えていき、正直なところ、パスワードを十分に管理できているとは言えない状態です。

現在はGoogleスプレッドシートでパスワードを管理していますが、それでも一部のサービスではパスワードの使い回しが発生しています。

また、パスワードをどこかにメモして保管する方法自体にも、セキュリティ上のリスクがあります。

最近は情報漏洩に関するニュースを目にする機会も増えました。銀行やクレジットカード関連、学校、市政サービスなど、重要な情報に関わるアカウントも多く、認証情報が漏れてしまった場合の影響は小さくありません。

そこで、これまでのパスワード管理方法を改めて見直すことにしました。

パスワードを管理する方法はいくつかありますが、今回はその中でも「パスワードマネージャー」を使った管理について整理します。

パスワードマネージャーとはどのようなものなのか、どのようなサービスがあり、料金や機能、家族との共有、緊急時の引き継ぎなどにどのような違いがあるのかを確認しながら、自分に合った管理方法を考えていきます。

なお、この記事に記載している料金や機能は、2026年9月30日時点の公式情報をもとにしています。料金、為替、キャンペーン、仕様などは変更される可能性があるため、利用を検討する際は各サービスの公式ページで最新情報をご確認ください。

パスワード管理方法

パスワードの管理方法には、いくつかの選択肢があります。

たとえば、紙のノートに書いて保管する方法や、Excel・Googleスプレッドシートなどにまとめて管理する方法があります。ブラウザやOSに標準で用意されているパスワード管理機能を使っている人も多いと思います。

それぞれの方法には、手軽さや使いやすさ、管理のしやすさに違いがあります。

紙やノートで管理する

紙に書いて管理する方法は、特別なサービスやアプリを使わずに始められます。

一方で、外出先から確認しにくいことや、紛失・盗難・災害などで失う可能性があります。また、登録するサービスが増えると、更新や整理にも手間がかかります。

職場などでは、パスワードを書いた付箋をPCや机の周辺に貼ってしまうことが問題になるケースもあります。管理するパスワードが増えてきた現在では、紙だけで管理する方法には限界もありそうです。

Excelやスプレッドシートで管理する

ExcelやGoogleスプレッドシートなどに一覧でまとめる方法は、情報を整理しやすく、自分の好きな形式で管理できます。

私も現在はGoogleスプレッドシートを使っています。

ただし、パスワードをそのまま記録している場合は、ファイルやアカウントにアクセスされたときに複数のパスワードがまとめて見られてしまう可能性があります。パスワードの生成や自動入力といった機能も、基本的には自分で補う必要があります。

ブラウザやOSの標準機能を使う

Google パスワード マネージャーやAppleのパスワード機能など、ブラウザやOSに標準で用意されている機能を使う方法もあります。

普段使っている端末やブラウザと連携しやすく、追加のサービスを契約せずに利用できるのが特徴です。

一方で、異なるOSやブラウザを組み合わせて使う場合や、家族との共有、緊急時の引き継ぎなどを考える場合は、対応している機能を確認する必要があります。

専用のパスワードマネージャーを使う

Bitwardenや1Passwordなどの専用サービスを使う方法です。

パスワードの保存だけでなく、自動入力、強力なパスワードの生成、複数端末での同期、家族との共有など、パスワード管理をまとめて行うための機能が用意されています。

サービスによっては、緊急時に家族などへアクセスを引き継ぐための仕組みもあります。

利用する機能によっては有料プランが必要ですが、管理するアカウントが増えてきた場合や、複数の端末で使いたい場合には、有力な選択肢のひとつになります。

パスワード管理の考え方については、「パスワード管理ベストプラクティス2025|ブルートフォース攻撃に負けない管理術」も参考になります。この記事では、個人向けの対策として、パスワードマネージャーの利用や重要なサービスでの多要素認証などが紹介されています。

パスキーという選択肢も増えている

最近は、パスワードそのものを入力せずにログインできる「パスキー」に対応するサービスも増えています。

パスキーは、スマートフォンやPCの生体認証、PINなどを使ってログインする仕組みです。パスワードを覚えたり入力したりする必要がなく、フィッシングにも強い認証方式として普及が進んでいます。

GoogleやAppleなどのOS・ブラウザ標準の管理機能だけでなく、一部の専用パスワードマネージャーでもパスキーを保存・同期できます。

今後はパスワードを使わないサービスが増えていく可能性がありますが、現時点ではすべてのサービスがパスキーに対応しているわけではありません。そのため、当面はパスワードとパスキーの両方を管理できる方法を考える必要がありそうです。

今回は、こうした選択肢の中から専用のパスワードマネージャーを中心に比較していきます。

6つのパスワードマネージャーを比較

この記事では、個人・家庭での利用を想定し、法人向けプランは扱いません。

今回は、次の6つのパスワードマネージャーを比較します。

  • Bitwarden
  • 1Password
  • NordPass
  • Keeper
  • LastPass
  • Dashlane

比較する主なポイントは、無料プラン・料金、対応端末、通常時の共有、家族での共有、パスキー対応、緊急時の引き継ぎ、データの移行・復旧、日本語対応です。

サービスごとにプラン構成や提供している機能が異なるため、単純に優劣を付けるのではなく、まずは主な違いを3つの観点に分けて確認します。

無料プランと複数端末

サービス無料プラン無料版の主な制限複数端末
Bitwardenありデバイス数・パスワード数は無制限無料版から対応
1Passwordなし(14日間トライアル)-対応
NordPassあり同時にアクティブにできる端末は1台データ同期可。有料版は複数端末で同時利用可
Keeperありモバイル1台・ログイン10件まで有料版で無制限
LastPassありデバイスタイプは1種類Premium以上でデバイスタイプを横断
Dashlaneなし(14日間トライアル)-対応

共有・家族利用・パスキー

サービス家族向けパスワード共有パスキー管理
BitwardenFamilies:最大6人対応対応
1PasswordFamilies:最大5人対応対応
NordPassFamily:6アカウントPremiumで対応対応
KeeperFamily:5人対応対応
LastPassFamilies:6人対応対応
DashlaneFriends & Family:最大10人対応対応

緊急時の引き継ぎと移行

サービス緊急時の仕組みインポート・エクスポート日本語情報
BitwardenEmergency Access対応あり
1PasswordEmergency Kit / Recovery Code / 家族による復旧対応あり
NordPassEmergency Access対応あり
KeeperEmergency Access対応あり・日本語サポート案内あり
LastPassEmergency Access対応あり
DashlaneDASHファイルを使った事前準備CSV / DASH / Credential Exchangeなど一部あり

表だけでは細かな条件までは表せないため、ここから各サービスの特徴を簡単に見ていきます。

Bitwarden

Bitwardenは無料プランから利用でき、無料版でもパスワード数・デバイス数に制限がありません。Windows、macOS、Linux、iOS、Android、主要ブラウザなど複数の環境で利用できます。

有料プランにはPremiumとFamiliesがあり、Premiumは月額換算$1.65(年額$19.80)、Familiesは月額換算$3.99(年額$47.88)で最大6人まで利用できます。Familiesでは、各自の情報を分けながら必要なログイン情報だけを家族で共有できます。

緊急時にはPremium以上で「Emergency Access」を利用できます。信頼できる人を事前に登録し、「表示」または「引き継ぎ」の権限を設定できます。待機期間を設定し、その期間内に本人が拒否しなければアクセスを許可する仕組みです。

1PasswordやLastPass、Chrome、Edge、CSV、JSONなどからのインポートと、データのエクスポートにも対応しています。日本語の公式サイトやヘルプも用意されています。

Bitwarden公式料金ページ

1Password

1Passwordは無料プランを設けず、有料プランを基本とするサービスです。IndividualとFamiliesには14日間の無料トライアルがあります。2026年9月30日時点では、Individualは通常$3.99/月、Familiesは通常$5.99/月で、初年度向けのプロモーション価格も表示されています。

Windows、macOS、Linux、iOS、Androidや主要ブラウザに対応しています。Familiesは最大5人まで利用でき、各自の個人用保管庫とは別に、家族で利用する共有保管庫を作成できます。保管庫のアイテムは共有でき、パスキーの保存・利用にも対応しています。

Bitwardenなどと異なり、一定期間後に第三者が保管庫へ入るタイプの緊急アクセスではなく、Emergency Kit、Recovery Code、Familiesのアカウント復旧などが用意されています。家族への引き継ぎまで考える場合は、Emergency Kitなどを誰がどのように保管するかも検討する必要があります。

他のパスワードマネージャーやブラウザからのインポート、データのエクスポートにも対応しています。日本語の公式サイト、料金ページ、サポートページがあります。

1Password公式料金ページ

NordPass

NordPassにはFree、Premium、Familyがあります。Freeでもパスワード保存、自動保存・自動入力、データ同期などを利用できます。

Freeは複数端末へインストールしてデータを同期できますが、同時にアクティブなセッションを利用できる端末は1台です。Premiumでは複数端末で同時に利用でき、Password Health、Data Breach Scanner、Emergency Accessなどが追加されます。Familyでは6つの独立したアカウントを利用できます。Premiumでは保存したログイン情報などを他のユーザーと共有でき、パスキーの保存・利用にも対応しています。

Emergency AccessではNordPassユーザーを指定でき、相手はFreeユーザーでも構いません。アクセス要求後、本人が7日以内に拒否しなければアクセスが許可される仕組みです。

他サービスやブラウザ、CSVからのインポートにも対応しています。日本語の公式サイトや料金ページも用意されています。料金はキャンペーンなどによって動的に表示されるため、この記事では具体的な金額を記載していません。

NordPass公式料金ページ

Keeper

KeeperにはFree、個人向けのUnlimited、家族向けのFamilyがあります。Freeはモバイル端末1台、保存できるログイン情報は最大10件です。

Unlimitedでは保存件数・利用デバイス数が無制限になり、ブラウザ拡張機能、共有、緊急アクセスなどを利用できます。Familyでは5人がそれぞれ独立した保管庫を持ち、必要なレコードやフォルダだけを共有できます。Keeperはパスキーの保存・利用にも対応しています。

Emergency Accessでは最大5人まで緊急連絡先を指定でき、連絡先ごとに最大3か月まで待機期間を設定できます。指定する相手はKeeperユーザーである必要があります。

他サービスやブラウザからのインポート、保管庫データのエクスポートにも対応しています。日本語の公式サイトがあり、Keeper Unlimitedでは24時間365日の日本語カスタマーサポートが案内されています。料金は公式ページ上で動的に表示されるため、この記事では具体的な金額を記載していません。

Keeper公式個人向けページ

LastPass

LastPassにはFree、Premium、Familiesがあります。Freeでも保存できるパスワード数に制限はありませんが、利用できるデバイスタイプは「コンピューター」または「モバイル」のどちらか一方です。

Premiumではデバイスタイプの制限がなくなり、Familiesでは最大6人がそれぞれ独立した保管庫を利用できます。家族管理用のダッシュボードや共有フォルダも用意されています。LastPassはパスキーの作成・保存・利用にも対応しています。

緊急時にはEmergency Accessを利用でき、信頼する相手を事前に登録しておくことで、その人から保管庫へのアクセスを要求できます。

他のパスワードマネージャーやブラウザからのインポート、保管庫データのエクスポートにも対応しています。日本語表示にも対応していますが、公式サイトやサポートには英語ページも多くあります。料金は動的に表示されるため、この記事では具体的な金額を記載していません。

LastPass公式料金ページ

Dashlane

Dashlaneの個人向けプランは、2026年9月時点ではPremiumとFriends & Familyが中心で、新規ユーザー向けの恒久的なFreeプランはありません。Premiumには14日間の無料トライアルがあり、Friends & Familyは最大10人まで利用できます。

PC、スマートフォン、タブレットなど複数の端末で利用でき、Chrome、Edge、Firefox、Safariなどのブラウザ拡張機能にも対応しています。家族プランでも各メンバーのデータは独立しており、必要なログイン情報だけを共有できます。Dashlaneはパスキーの保存・利用にも対応していますが、2026年9月時点ではパスキー自体の共有には対応していません。

現在は以前のEmergency Contact機能を提供しておらず、公式ヘルプでは緊急時に備えて暗号化したDASHファイルを作成し、信頼できる人へ引き継ぐ方法が案内されています。DASHファイルは自動更新されないため、内容を変更した場合は新しく書き出す必要があります。

CSVによるインポート・エクスポート、暗号化したDASHファイルによるバックアップ・移行などに対応しています。日本語で確認できる公式サポート情報もありますが、最新情報の一部は英語ページで案内される場合があります。料金は動的に表示されるため、この記事では具体的な金額を記載していません。

Dashlane公式料金ページ

専用サービスを使わない選択肢

専用のパスワードマネージャーを契約せず、Google パスワード マネージャーやAppleのパスワード機能を利用する方法もあります。

普段使う端末やブラウザがある程度統一されている場合は、追加費用をかけずにパスワードやパスキーを管理できる点が便利です。

一方で、異なるOSをまたいで利用する場合や、家族への共有、緊急時の引き継ぎまで考える場合は、自分が必要とする機能に対応しているかを確認する必要があります。

条件別に確認したいポイント

無料で始めたい場合

無料プランがあるサービスでも、制限内容は異なります。

Bitwardenは無料版でもデバイス数・パスワード数に制限がありません。NordPassはデータを複数端末へ同期できますが、Freeでは同時にアクティブにできる端末が1台です。Keeperはモバイル1台・ログイン10件まで、LastPassは利用するデバイスタイプに制限があります。

「無料プランがあるか」だけでなく、自分が使う端末数や使い方に合うかを確認する必要があります。

家族で利用したい場合

家族向けプランでは、利用できる人数だけでなく「各自の保管庫が独立しているか」「必要な情報だけを共有できるか」も確認したいポイントです。

今回確認したサービスでは、家族向けプランの人数は5〜10人と幅があります。

緊急時の引き継ぎまで考えたい場合

緊急時の仕組みは、サービスによって大きく異なります。

Bitwarden、NordPass、Keeper、LastPassには緊急アクセス機能があります。一方、1PasswordはEmergency Kitや復旧機能、Dashlaneは暗号化したDASHファイルを事前に準備する方式です。

単に「家族プランがあるか」ではなく、自分が操作できなくなったときに家族がどうアクセスするのかまで確認しておく必要があります。

複数OS・端末で利用したい場合

WindowsとMac、iPhoneとAndroidなどを組み合わせて利用する場合は、対応OSと無料プランの制限を確認します。

専用パスワードマネージャーは複数のOSへ対応しているものが多い一方、無料プランでは同時利用できる端末に制限が設けられている場合があります。

まとめ

パスワードマネージャーには、それぞれ異なる特徴があります。

今回確認しただけでも、無料プランの制限、通常時の共有方法、家族向けプランの人数、パスキー対応、緊急時の引き継ぎ方法などに違いがありました。

導入前には、次のような点を確認しておくとよさそうです。

  • 無料の範囲で自分の使い方に足りるか
  • PCとスマートフォンなど複数端末で利用できるか
  • 家族で利用する場合、必要な人数に対応しているか
  • 日常的なパスワード共有ができるか
  • パスキーを保存・利用できるか
  • 自分に何かあった場合の引き継ぎ方法があるか
  • 現在の管理方法から移行できるか
  • 将来ほかのサービスへ移行するためにデータを書き出せるか
  • 日本語で必要な情報を確認できるか

どのサービスが合うかは、無料範囲や利用する端末、家族共有、緊急時の引き継ぎなど、重視する条件によって変わります。

私自身が実際にどのサービスを選び、どのように導入・移行したかについては、別の記事でまとめる予定です。